2023/12/09

木星を撮る2023年度版 (自動導入とトラッキング)

みなさんどんな感じで天体導入しているのかわからないんですが、もっといい方法あったりしたら教えてください。と前置きしておきます。

これを書いてる時点で MAK127 と AZ-GTi のセットを買ってもう4年目(遠い目)。コロナ禍をきっかけに天文ほぼ素人から始めて、いまだにわからないこともいっぱいあるのですが、今年2023年は木星を撮影しまくり、ようやく撮影がルーチンワーク的に進められるようになってきました。そこに至る経緯と現状について MAK127+AZ-GTi での観点からメモしておきます。ちなみに今年の木星シーズン初めの頃はまだモタモタしてました。というのもそれまでは撮影するのが一苦労でワンシーズンでそれほど撮影してないんで色々向上しなかったと。

ところで撮影環境は東京都内西部(環七と環八の間らへん)の自宅です。自宅は北極星がギリギリ視認できる程度の光害レベル。従って MAK127 付属の x1 のドットファインダーのみではよほど明るい天体でないと導入できないへなちょこなので、自動導入という仕組みがなかったら望遠鏡買ってなかったなーと。望遠鏡は撮影ごとに出したりしまったりするので毎度毎度前事前準備が必要です(ベランダに置いた収納ボックスにカメラ以外の望遠鏡一式が入れっぱなしなのですぐ出せはしますが)。

いいんかこれで?でも機動力優先!

また自宅は木造建築なので、望遠鏡を出してるベランダが揺れやすいだけでなく(家族が家の中でドタドタしても揺れる。。)、立っている位置を変えると導入している天体が簡単にズレます。高倍率の時は最悪です。

過去の経緯1

MAK127+AZ-GTi を初めて買った年は右も左もわからずググって接眼レンズを通してカメラ撮影できるらしいということを知り、MAK127 に付属の接眼レンズを拡大撮影用アクセサリー を通し、D750 を接続して撮影に挑んでました。ファインダーは MAK127 に付属のドットファインダーのみです(後で色々変える)。手順は以下でした。ちょっと思い出しながらなので正確じゃないところもあるかも。基本的にはファインダーを調整しておく。天体を導入したらとにかくファインダーを再調整しておく。途中すっ飛んでも大丈夫なようにとにかくファインダーはこまめに調整しておく。で、今でも流れは変わってないです。

拡大撮影用アクセサリーと 20mm のアイピース


天体の導入

  1. 20mm のアイピースでファインダーの調整
    適当な地上の目標を使い、20mm のアイピースで目標を導入(カメラなし。眼視で)します。AZ-GTi に SynScan App で接続し、方向キーで目標を正確に視界の中央にします。ドットファインダーを目標に合わせます。ここも極力正確に。

  2. 10mm のアイピースでファインダーの調整
    更にアイピースに変えてさらに追い込む。ピントが合う位置がズレるのでピント調整しなおし。

  3. アライメント
    ファインダーの調整が終わったらAZ-GTi のアライメントを行います(1~2スター。状況に応じて。3スターまではやってないです。対象の天体が見えなかったりわからないケースが多いので)。まずは AZ-GTi の水準器を見て水平に。そして経緯台モードなら望遠鏡も水平(スマホの水準器とか使うと便利)、スマホのアプリなど使って北の方向に向けておきます。スマホのアプリって毎回微妙に方向変わったりと正確に合わせるの難しいです。もうざっくり。ちなみに自宅から北極星は見えるので、だいたいこっちかなーと微調整するときもあります。ここで忘れないようにするのが、AZ-GTi の高度と方位クラッチのネジをきっちり締め直すこと!たまにネジが甘くてトラッキング時にあれあれ?となったりします。あとファインダーを触らない!ちょんと触ってズレて後で使えなくなることもしばしば。ちなみに付属のドットファインダーの調整ネジや本体は遊びが多いのでテープでぐるぐる巻きにしてみたりと少し工夫してます。

    ようやくここでアライメントを開始するボタンをクリック。アライメント先の天体がだいぶ離れたところに導入されてたりします(いつも思うんですがこんなもんなんですかねぇ。。それなりに水平と北向きは合わせてるつもりなんですが。自分のいる位置によってベランダが歪むのも一因だとは思うんですが)。流石に x1 のドットファインダーの視野には入っているので、覗きながら赤ポチを天体が中央になるように AZ-GTi の方向制御ボタンをポチポチしながら導入します。続いてアイピースを覗き、天体がセンターになるように調整してようやくアライメント終了。念の為、最後に合わせた天体でファインダーを再調整しておきます。

  4. 自動導入
    ようやく目的の天体を導入。導入直後はほぼほぼズレているので、ファインダーを覗きながら赤ポチに天体が入るよう AZ-GTi の方向ボタンをポチポチします。これでアイピースを覗いた時に天体が真ん中に導入されていればラッキー。見つからなかったら AZ-GTi を操作しながら周囲を探しに行きます。ファインダーの赤ポチで天体の周辺をぐるぐる探す感じです。見つかったらアイピースで覗いてセンターに移動、ファインダーも再調整です。ファインダーの調整は結構荒いので、赤ポチと星をちょうど重ねるのは難しいかもしれませんので、赤ポチのやや左側とかそんな感じでセンターになった場合どこら辺に合わせて置いたか記憶しておきます。ちなみにファインダー覗いて位置合わせを追い込むので暗い天体は厳しいです。うちの場合、土星でやや厳しい。

  5. カメラ装着
    鬼門です。アイピースを外して拡大撮影用アクセサリーに差し込んで、D750 と接続したものを差し替えます。カメラが結構重いのでせっかく天体を導入していてもすっ飛びます。経緯台の場合主に高度方向にズレるだけなので上下させるだけですぐ導入できる場合がありますが、ファインダー覗いて赤ポチを頼りにズレを戻すと導入しやすいです。カメラの感度もガンガンに上げておくと漏れ出てくる光でなんとなくそっちに天体があるかもというのがわかる時があるので、それを頼りに導入を行います。それでも導入が厳しい場合は 10mm -> 20mm のアイピースに戻して広い範囲からセンターに順に追い込みます。ただこの場合ピントのずれが大きくてピントを再調整する必要があったりするので、ピント調整で望遠鏡がグラグラするので辛いです。今思えばファインダーの調整、アライメントの段階からカメラ装着して位置を追い込んでも良かったなと思います。最近はいきなり高倍率状態でアライメントしちゃいます。

トラッキング

導入が終わると自動的に追いかけてはくれるのですが、放っておくとそのうちずれていきます。撮影中もつーっと流れていってしまうことがあるのですが、撮影範囲にはいっているのならばそこは気にせず、SynScan App の方向キーでちょこちょこ真ん中らへんになるように修正をかけていきます。高価な赤道儀だとここらへんどうなんでしょうか?極軸しっかり合わせてると AZ-GTi よりはだいぶマシなんですかねぇ。自分の場合は撮影中はつきっきりでした。なので一回の連続する撮影だけで疲れちゃいます。デローテーション用に複数のデータ撮るのは至難の業でした。初めて長めのアニメーション用の撮影したときは2時間ぐらいつきっきりでしたし。ちなみにある程度撮影範囲をふらふらするデータでもスタックする際もしくはその前に PiPP のようなツールでセンタリングさせてしまえば問題なくスタックできます(PiPP が最近 Web から消えた。。非常に困る)。流石に風が強くてブルブルしているようなケースではうまく行かない場合もありますが。
SynScan App での方向キーでの架台のコントロールは PC のゲーム用コントローラーで行うことができます。少なくとも PC の SynScan Pro App 最新版では。PC の画面をマウスでクリックしたり、携帯の SynScan App を指で制御するより明確でわかりやすです。もしゲーム用コントローラをお持ちでしたら試してください。Windows だと有線でも無線でもどちらでもOKでした。

過去の経緯2

天体の導入

MAK127 購入一年後には撮影機材が進化して、アイピースはバローレンズ(x2) になり、カメラは D750 から ASI462MC という惑星向きの非冷却カラーカメラになりました。基本的にはカメラが劇的に軽くなったので、カメラの装着で大幅にズレるという問題は解消しました。バローレンズ x2 も入れたりと拡大率が高くなってしまったので導入に苦労するようになりました。バローレンズなしで合わせて、バローレンズを入れて導入してましたが、ドットファインダーを調整したつもりでも、赤ポチのどこに天体を合わせるとカメラの視界に入ってくるのかわかりにくくなったり、バローレンズの入れ替えでピントの再調整があったりと、天体を導入することが億劫になり、モチベーションがだいぶ下がりました。しばらくそんな日が続きます。

それを変えたのがファインダーでした。ドットファインダーから 9x50 の照明付きファインダーに交換しました。これが ASI462MC を導入したのと同じ年。これは劇的に効きました。まずレンズがないドットファインダーに比べ拡大してくれるのと、ドットではなく細い二重のクロスゲージでセンターを表示してくれるので、ガイドがドットファインダーの赤ポチのように天体に被らないので、目的の天体を真ん中に置いていることがわかりやすくなりました。また天体の周りにクロスゲージがあるので天体がカメラに入ってこない場合にどこらへんを探索しているのかがわかりやすくなりました。副次的にいままで見づらかった土星もはっきり見えるようになって土星の導入もだいぶ楽になりました。このころから低倍率からだんだん高倍率にして導入することもなくなり、いきなり高倍率状態(ASI462MC にバローレンズ x2 を付けた状態)からのアライメントをするようになりました。ただし、それを行うには今まで以上に最初のファインダーの調整をシビアにするようになりました。アライメントの方も撮影中だけマニュアルで微調整するから 1スターでいいやと雑にもなってきました。

過去の経緯3

天体の導入

ファインダーを導入して高倍率時の天体の導入はだいぶ楽になりましたが、一つ困った問題が発生しました。アライメントです。導入したファインダーの倍率だと最初のアライメント時にターゲットの天体がファインダーから外れてしまうことが度々おこりました。仕方ないのでアライメントを開始後に、望遠鏡とターゲットの天体の方向を目視で確認して、SynScan の方向キーでおおよその方向を修正ののち、ファインダーの視界に入ってきたらファインダーを覗きながらアライメントを進める。という手順でした。
次の改良はファインダーを複数載せるでした。3スロットスターポインター(という名前だったらしい三又のファインダー台座)を導入です。これ買った時は2000円ぐらいだったんですが、久しぶりに見ると高くなってます(類似品見つけた方がいいですね)。これを導入したらアライメント時にはドットファインダー見ながら大まかに架台を制御して、続いて高倍率ファインダーに切り替えて追い込むと、ファインダー二つの調整が必要なものの、安定して確実に導入していけるようになりました。これの導入には別な目的もあって、当時はまだ行っていなかった AZ-GTi を赤道儀化したときのファインダーの位置解消にも使えると思っての投資でした。AZ-GTi は赤道儀を使えるファームにすると経緯台モードの時に左側に付けていた MAK127 が右側につけるようになってしまうので、ファインダーをつける位置が左下ととても見えにくくなってしまいます。三又のファインダー台座で少しは改善が可能です。

二連装

2023年度

天体の導入

ファインダーの改善

2022年は特に進歩もなく、そして現在。ファインダーを二つ調整する面倒くささと、三又のファインダー台座がそこそこ重いという問題がありつつも導入もルーチンワーク化して特に大きな問題とは思ってませんでした。

ところが、YouTube で電視ファインダーの作成なるものを見つけてしまいました。これはーと思って早速作ってみたら、うん、これは世界が変わるでした。それが2023年9月末。惑星のシーズンも終盤にさしかかったところでした。電視ファインダーの導入で変わったこと、
  • 無理な姿勢でファインダーを覗く必要がなくなった
  • 焦点距離を短めにして広範囲を表示してアライメントに迷うことない状態にし、導入で追い込む時は電子的に拡大してとファインダーの焦点距離を擬似的に複数持つことができてファインダーを一つに集約できた
  • ファインダーは PC で確認できるようになったので、別な PC からログインするというリモート活用ができるようになった

ドットファインダーの頃から
ファインダーの調整に1km ほど先にあるマンションの赤色灯を利用してます


左が FireCapture の ASI462MC x2.5 のバローレンズがすでに付いてます
右が SharpCap の Ceres-C (電子ファインダー) x800 の最大倍率での合わせ込み中

電視ファインダーをこんな感じで合わせ込みをしてます。表示したクロスゲージのど真ん中になるよう電視ファインダーのネジを調整しておきます。

トラッキング

今年は電視ファインダーの導入で急激に色々なことが変わり始めました。次に課題となってたのが、トラッキング。これも改善してしまいました(電視ファインダーとは関係ないんです。FireCapture です)。電視ファインダーを導入する前まで惑星の撮影は SharpCap 無料版で行っていましたが、ついでに FireCapture に変更しました(SharpCap 買い切りなら購入してもいいんだけど、毎年払うのは嫌だなと。で購入には至らず)。FireCapture はフリーでありながら惑星撮影には便利。導入に成功したら SynScan を ASCOM で FireCapture で接続し、Autoguide をオンにしておけばあとはその場を離れても FireCapture が撮影映像の木星が中心になるように AZ-GTi を自動で制御してくれて、ずっとトラッキングし続けてくれます。これでもう安心。撮影に集中できます。ROI(撮影範囲)を極力狭くして FPS を上げることもできますし、ピントを心ゆくまで追い込んだり、デローテーションのために複数回数撮影したり、ゲインや露出を変えるのを試したりなど色々やりやすくなりました。しかも PC は 家庭内 LAN に WiFi 接続してるので、離れた居間で暑さ寒さや蚊に悩まされることもなくビール片手にシーイングが回復するのを待つとか、雲の切れ目を待っての撮影などとても快適な環境になりました。良さげだなーとおもったら Autorun でポチッとワンセット撮ってしまいます。

赤丸で囲ったのが Autoguide のボタン
Autorun で撮影中の画面

おしまい。

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