2022/10/31

AZ-GTi をついに赤道儀化(激安バランスウェイトの自作含む)

はじめに

AZ-GTi を MAK127 とセットで買って 2年と4ヶ月ほど。ついに赤道儀化です。やってみてしまえば仰々しい赤道儀化という名前ほど大したことはなかったのですが、

  • ファームを入れ替えると Right Arm になってしまう(赤道儀モードは Right Arm のみ)
  • 微動雲台やバランスウェイトや極軸望遠鏡(いるの?)の追加費用
  • 赤道儀の経験ゼロなので色々不安!!!
  • 経緯台モードで惑星撮影十分楽しめてるからいいじゃん

を考えるとなかなか手を出せない(出さなかった)という状況でした。
特に Right Arm 仕様は困ったもので、セットになっている MAK127 は経緯台モードで MAK127 のファインダー側から見ると AZ-GTi の左側にセットするようにできています。ガイドスコープが MAK127 の左上に乗る位置です。

こんな風にセットします(二つ載せてますが。。)

普段は風や周囲の明かりを避けるため、三脚は一番低く、地べたに座って運用してるので、Right Arm になってファインダーが右斜め下についてしまうとファインダー覗くの非常に大変。。これが一番躊躇してる理由でした。でもオリジナルのファームに書き直せばいいんだよね?と思ったらまぁダメなら戻せばいいかと気が楽になりました(まだ試してないけど)。そもそもオリジナルのファーム公開してるの?ということころも分かってなく、無駄に不安がってましたが、Right Arm 版だけでなくオリジナルのアップデートもダウンロードサイトに置いてあります。

追加費用は赤道儀の経験及び AZ-GTi の赤道儀モードの使い方がわからないので、なにがどこまでいるのかわからず、投資したものの全く使い物にならないとイタイなと。AZ-GTi の極軸望遠鏡の運用ってどうよ?というところから未知で。最低限微動雲台はいるものの、載せる望遠鏡やカメラ次第ではバランスウェイトもなくても使えなくはないなという感じです。ちなみに追加費用はスカイメモSの微動雲台が一番高くて Amazon で 13000円程。バランスウェイトには 1500円ほどを費やしましたのでトータルで 15000円以下。

赤道儀の運用経験ゼロなので、というのも不安要素。どうやって極軸合わせするんじゃーいと思ってましたが、北極星がなくても極軸合わせができるということがわかりこれも解決(極軸望遠鏡すらいらない)。しかも自動導入もできるので経験ゼロでもどうにかなる。

というわけで 2022年の例年に比べて 10月中旬までの長い惑星撮影期間が終わった(シーイングが明らかに悪化)のを機会に赤道儀化に挑みました。

そもそも赤道儀化をやってみたかったのは憧れのアンドロメダ銀河を撮影してみたかったので。ちょうど一年ほど前に試したことがあるのですが経緯台モードだと撮影した像がぐるぐる回転してしまいます。都内からの撮影ですぐに飽和してしまう長時間露出は出来ないので短時間露出では経緯台でもいけなくはないのですが、撮影した像が回転するとスタック時に使えるのは真ん中のみになってしまうので困ります。なので赤道儀で撮影したかったわけです。

まだ二晩ほどの運用ですが、赤道儀のメリットを享受することができました。像が全然回転しないし、経緯台モードより露出伸ばしても星が流れないです。当たり前か。ただ以前に経緯台モードで撮影したときもうっすら感じてたのですが、光害カットフィルターが無いせいか地上側が処理した後に明るいんですよね。。次はそこが気になります。

AZ-GTi の赤道儀化

は簡単です。

ファームの入れ替え

スカイウォッチャーのファームウェアダウンロードの場所()に行き、SynScan USB ドングルまたは SynScan hand コントローラーを使ってファームをアップデートするツールか、WiFi を使ってアップデートするツール (Windows 用しかない) のいずれかと、赤道儀対応の AZ-GTi のファームのふたつをダウンロードしてきます。

Windows のアップデートツール
  • Windows program: Motor Controller Firmware Loader
  • Windows program: Motor Controller Firmware Loader - WiFi
いずれかひとつ。上が SynScan USB などケーブルで Windows マシンからダウンロードするバージョンです。

AZ-GTi のファーム
  • Firmware: AZGTi Mount, Right Arm, AZ/EQ Dual Mode
これ持ってきます。ちなみに元に戻したい場合は、
  • Firmware: Universal DC Motor Driver with Built-in Wi-Fi
をダウンロードします。試したことないけど。書き込みは自作ケーブルで行いました。もともとのファームのアップデートかけたり赤道儀化のファームを書いたりと特に問題なく行えています。

ファーム書き込みツール (SynScan USB などを使う版) はダブルクリックすると以下のようなウインドウが現れるので、ケーブルを接続し、電源を入れ、ファームを選択したら Browse から別途ダウンロードしたファームを選択し、


Update ボタンを押すとアップデートが始まります。そこそこ時間かかります。アップデートの前後で MC Version でバージョンが変わったことを確認してみると良いかもしれません。ちなみに赤道儀有無で MC Version は変わらないようなのでどちらが入っているかこのボタンはわかりませんでした。

赤道儀化できる微動雲台を付ける

これも対応する微動雲台を用意できれば接続するだけです。ケンコーのスカイメモS用の微動雲台を入手してそれに載せました。アリガタを AZ-GTi の底に付けるのですが、AZ-GTi の底にある凹みの利用方法がわかりました。滑り防止なんですね。


あと注意点がひとつ。アリガタを固定するノブが AZ-GTi に干渉します。半径が十分小さいものに変更するなど工夫が必要です。ノブを削って小さくしてしまう人もいるようです。


自分の場合は、頭が6角の M8 のねじに交換しました。雲台を三脚に載せ、AZ-GTi を雲台に固定します。ちなみに雲台には角度表示のメモリがあるのですが、90° - 現在の緯度 (35°ぐらい) を引いた値のところに合わせておきます。

バランスウェイト・シャフト

実際に Nikon D750 と 300mm のズームレンズを載せ、方位角ノブ(上記写真で、交換したねじの上にある小さな黒いノブ)を緩めるとそれなりに重量があるのでクルンと回ってしまいます。これは、、ということでバランスウェイトを取り付けようと思い、シャフト自身は 12mm のねじが切ってあれば繋がるということがわかっていただけで、急遽近所のコーナン(というどちらかというとプロ向けのホームセンター)に行って使えそうな部品を漁ってきました。なんだかんだで全部で 1500円弱といったところ。うまくいけばラッキーです。

12mm ネジが切ってある 285mm の棒と、M12 の滑り止め付きのナット(普通のナットの片側が裾が広くなっていて滑り止めように溝が切ってある)、そしてウェイトに使えそうな穴のあいた四角いそこそこ重量のある板(Z角座金というらしい。80mm x 80mm x 9mm)が売っていたので、複数の板を組み合わせてウェイトがわりにすることにしました。座金に空いている穴は 12mm のシャフトに対し 18mm ぐらいと随分大きく、スカスカしてます。ネジで締めるとそれほど気にはならないのですが、3D プリンターを持っているのでスペーサーを自作しました。


重量は 5枚で 2kg ほど。サイズ感もちょうどいい感じです。重さは枚数で適宜調整できるので試してみて適当に変えてみようと思います。最終的には座金はバラバラしてると扱いにくいのでビニールテープでぐるぐる巻きにしました。気持ち固定用のチョウナット、ほとんど意味のない脱落防止のエンドのナットを追加して出来上がりです。


ビニールテープを巻いた後だと座金を止めている滑り止め付きのナットが座金にピタッと張り付いて座金がスムーズにくるくる回るようになりました。


クルクル回りすぎるのでチョウナットを追加したのですが、きっちり締めないと動いてしまいます。まぁネジなんで簡単に大幅にずれたりはしないからいいですかね。

運用

運用というほどではないですが、我が家のベランダの場合、北側の空は視界が開けてます。まずは水準器できっちり水平を取り、あらかじめ以下のようなポジションにセットして、せっかくなので北極星をマニュアルでざっくりと導入しちゃってます。都内だと天候にもよりますが北極星は肉眼でギリ見えるか見えないかぐらいですが、どうにかこうにか。

このポジションでいいんですよね?
きっちりホームポジション?に合わせる方法わからないのですが。。

マニュアルは読んでないので、、人様のブログ(ありがとうございます!)によると赤道儀として使う場合は SynScan Pro の 2スターアライメントを推奨しているようです。その後、SynScan Pro のユーティリティー→アドバンスド→極軸アライメントを選択すると、基準となる星を導入(2スターアライメントに使用した星を推奨)し、緯度の調整(微動雲台のノブで中央に調整)、方位の調整(微動雲台のノブで中央に調整)を行うと完了です。最初に北極星をなんとなく導入しておきましたが、だいたいの方向でよいらしいです。少なくとも緯度がきっちり合わせられてれば大変じゃないような。ところで調整最後ど真ん中にならないのは調整不足?ちなみにスカイメモSの微動雲台の方位の調整のネジ片方を緩めてもう片方をねじ込んでの調整はちょっと固めでした。

あとは自動導入でもなんでもござれです。赤道儀、撮影した画像が回転してなくて感動です。ぼちぼちいろいろと撮影試してみます。



2022/01/23

私家版 天体写真の撮影機材と撮影 (2021年度版)

MAK127とAZ-GTi を手に入れて一年半。木星を手始めに眼視よりは撮影重視で楽しんできました。MAK127 と AZ-GTi は値段も手頃で初心者にはありがたい組み合わせです。Twitter をみていると、より高解像度な惑星を撮影するために MAK127 より大口径に移行していったり、より安定した導入や長時間露光などを求めて AZ-GTi の経緯台またはおまけの赤道儀モードからちゃんとした赤道儀を導入されていく方がちらほらと。

まだしばらくこの組み合わせでやっていこうと思います。

AZ-GTi の赤道儀化とかまだやってみたいことはある。

撮影機材

望遠鏡

  • Skywatcher MAK127 (有効径: 127mm, 焦点距離: 1500mm)
  • Vixen Icarus-6M (有効径: 60mm, 焦点距離: 910mm)
MAK127 はマクストフカセグレンというタイプの望遠鏡。安い割にはよく見えると定評です。月、惑星向き。買った当初は月、惑星と言われてもピンときませんでしたが、倍率的に星雲、星団ははみ出ちゃうので厳しいです。また F値が暗い (1500/127=約F12)ので撮影にもあまり向かないと言われます。でもそれなりに楽しめます。撮影対象は月、惑星(木星、土星、火星、金星)とオリオン大星雲(M42)ならギリ。シュミットカセグレン系は筒内気流により像が安定しなくなるという欠点があるので観測開始よりしばらく前の時間に出しておいてというのは基本のようですが、鏡筒に災害用の保温アルミシートを巻き始めました。効果の程はいかほどに?

Icarus-6M は本当に古い安物。小学生の頃に買ってもらってほぼほぼ寝ていたものを、最近アメリカンサイズの接眼レンズなどが使えるように改造。また AZ-GTi に搭載できるように、アリガタプレートを装着。撮影対象は月。オリオン大星雲もいけそうな気がするけど暗い(910/60=約F15)ことと、変に色がついているっぽいので難しいかなと。その代わり月は案外解像してくれるので、一枚物の撮影用として D750 と組み合わせて使うことが多いです。


架台

  • Skywatcher AZ-GTi (赤道儀未対応)
だけです。現状使えるのは。カメラだけの場合、カメラ用三脚を使うこともあります。月とか彗星や流星の撮影で。AZ-GTi に赤道儀対応のファームを入れると赤道儀としても使えるのですが、MAK127 が赤道儀対応ファームを入れると、経緯台時にファインダーがとてもみづらい位置になるので、躊躇しています。星を導入するのにファインダー必須ですから。あと赤道儀化にはファームの入れ替えだけでなく、斜めにするための台座、バランスウェイト、極軸望遠鏡など追加で必要になるものがあるのと、うちのベランダって北極星方向は開けてるけど、北極星が肉眼で見えない日も多々あるんですよね、というところも躊躇するところ。

カメラ

  • Nikon D750 (Size: 6016 x 4016, Pitch: 5.97um x 5.97um)
  • ZWO ASI462MC (Size: 1936 x 1096, Pitch: 2.9um x 2.9um)
一昨年はよくわからないものには投資したくなかったので、とにかく D750 でがんばりました。フルサイズのデジイチなのですが、フルサイズは画素が大きいので集光率がよい反面、同じものを撮影すると、対象に対するピクセル数が荒くなります。どっちがいいんだろ?なので APS-C を撮影に使っている方も多いようです。その点天体撮影に特化した CMOS カメラ、ASI462MC は画素ピッチが D750 の半分程度なので、惑星をより高解像度に撮影することが可能です。画素が小さい分のノイズはスタックすればさっ引くことができるので多分いいんですね。ただセンサーのサイズそのものがフルサイズよりは小さいので撮影範囲が小さいです。月の拡大には使えますが、星雲系には全然使えないです。D750 の動画撮影機能はどうしても圧縮されたフォーマットしかないので、あんまり嬉しくないというのもありました。また SharpCap からコントロールできない(できなくはないようですが僕はできていない)のも使いにくい点です。ASI462MC は生データが得られるので天体撮影には間違いなく有利です。



バローレンズ・レデューサー

  • SVBONY x2
  • SVBONY x3
  • SVBONY x0.5
一昨年天体写真を撮り始めた頃は、接眼レンズを挟んで D750 を MAK127 に接続していましたが、最近はなにも間に挟まない直焦です。バローレンズはお試しで x2 買ったのにはじまり、もっと拡大したくて x3 (望遠鏡の口径次第であまり拡大しても意味ない)を追加で。ASI462MC に付けて使っています。またMAK127 でも広範囲を撮ってみたくて x0.5 のレデューサーも買ってみましたが、レデューサーは周囲が歪むのでイマイチかな。。

レンズ

  • Nikon AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR 
D750 のレンズ他多数。24mm, 35mm, 50mm, 12-24mm(DX) など持ってますが、上記を主に使ってます。あまり天体写真に良いレンズとは思いませんがこれしか焦点距離長いの無いので。


その他アイテム

  • ZWO ADC 1.25''
大気分散の影響を避けるためのプリズムが入ってます。主に惑星の撮影に使います。AZ-GTi だと調整中に望遠鏡が揺れるのでとても調整しづらいです。

撮影

AZ-GTi は月を撮影するときは全く制御しなかったりします。スチルでも動画でも。セットするの面倒なので。それ以外の時はちゃんとアライメントとって自動追尾させます。しかし暴れることしばし。。

撮影に使うソフトは ASI462MC は SharpCap、D750 は digCamControl を使用しています。APT (Astro Photography Tool)も入手したけど使いこなせておらず。APT は D750 もコントロールできていいんですけどね。D750 でスチル一枚を撮るだけの時と、動画を撮る時(今はやらない)のときはソフト使いません。ブレないようにレリーズは使います。

  • D750 + NIKKOR 28-300mm (スチル一枚撮り)
  • D750 + Icarus-6M (スチル一枚撮り)
  • D750 + MAK127 (スチル一枚撮り、動画)
  • ASI462MC + MAK127 + 直焦, x2, x3 バローレンズ (動画)
色々な撮り方しています。スチル一枚撮りではシャッタースピードもだいぶ速いので、三脚だったり、AZ-GTi に載せても電源いれてなかったりします。動画も30秒ぐらいならありかと。ASI462MC を使った場合はだいぶ拡大になるので自動追尾させながら撮影し、部分、もしくは全体モザイク合成をします。




惑星(木星、土星、火星、金星)

  • ASI462MC + MAK127 + x3 バローレンズ + ADC (動画)
この組み合わせしかありません。D750 では倍率を上げるため、接眼レンズと組み合わせて動画を撮っていましたが、ASI462MC の方が遥かに良いので D750 では撮影しなくなりました。



星雲星団系

  • D750 + NIKKOR 28-300mm (スチル一枚撮りを複数)
  • D750 + MAK127 (スチル一枚撮りを複数)
MAK127 に D750 直焦はちょっと倍率高いので対象が絞られます。M42 ではみ出る。また一枚どりでもこちらは数秒を数百枚レベルなので、AZ-GTi で自動追尾させます。経緯台モードなので像が回転してしまうのが難点ですが、DeepSkyStacker がそんな画像でもスタックしてくれるので真ん中は使えます。お試しで少ない枚数を撮って重ねるだけなら普通の三脚で固定もありかなと思います。 


こうしてみると、とりあえず星雲星団系撮るレンズが無い。。28-300mm は周囲歪むんですよ。星が点にならずに放射状になる。多分レンズのせいです。普段使いでは便利なんですが。




私家版 天体写真の処理 (2021年度版)


一昨年から始めた天体写真の 2021年度に主にやっていた方法まとめ。一昨年は本当に手探りでした。そもそも都心の家から出ずに撮った画像からどんなものが出てくるのか皆目わからなかったので、ステライメージのような商用ソフトに手を出す前に、フリーのツールでできる範囲でということを主眼に置いてます。もちろん他にもいい方法やツールはあるとは思いますので、良い方法見つけたら試していきたいと思います。また本当は Mac で全部やりたいんですが、現状 Bootcamp の Windows で完結してます。M1 Mac も欲しいけど悩ましい。。

月、惑星の処理

基本的には動画をスタックして、ウェーブレットで強調処理をかけています。ただし月に関してスチルで一枚撮りの場合は、ウェーブレットで強調処理かけておしまいにする場合もあります。楽ちんなので。その場合強調処理をしたいとき、フォトショ系ツールで強調するよりパリッと仕上げやすい気がします。その後フォトショ系のツールで色味などを整えています(面倒なので iPhone だったりする。でも優秀)。元画像は RAW だったり、動画の方も非圧縮とかとにかく高画質なものの方がいいです。あと飽和すると画素データが消失するので、ちょっと暗めに撮っておくといい感じかと思います。


スチルの処理

ウェーブレット変換の機能のみを Registax6 で行ってるだけです。スチルを一旦 TIFF フォーマットに変換して、それに対して Registax6 に読み込ませます。だいたいレイヤー2,3あたりのスライダーと Sharpen, Denoise あたりをいじってます。Registax6 の出力フォーマットは 16bit の PNG にしてます。他のフォーマットも出せますが、TIFF はでかく、JPEG は非可逆の圧縮がかかるので、とりあえず PNG にしてます。
月を撮るときは ISO感度は低めでシャッター速度もかなり速くできます。

動画の処理

惑星(金星、火星、木星、土星など)の処理と月で使うツールは同じです。Autostakkert! でスタック処理をして、TIFF を出力、Registax6 でウェーブレット変換での強調処理をおこないます。スタック処理しただけではモヤっとした感じでもウェーブレットで強調処理をすると詳細が浮かび上がってきます。Autostakkert! の受け付ける動画フォーマットは制限があるので、対応しない MOV などは PIPP などのツールでフォーマットの変換をする必要があります。SER などの劣化しないフォーマットを選びます。また PIPP は自動追尾していてもしていなくても対象が画面上フラフラしている(風だったり振動だったり追尾エラーだったり)のをセンタリングして切り出す機能や、画質の悪いフレームを削除する機能があるので併用したりします。Autostakkert! にもセンタリングする機能はあるのですが、PIPP でセンタリングした方が良い場合があります。月の拡大撮影の場合は PIPP よりも Autostackkert! でアンカーに固定した方が良い時もあったりします。スタックしたあとの Registax6 の操作はスチルと特に違いはありません。
動画は時間にして30秒程度で1500枚程度の画像が得られ、それだけあれば十分な感じです。大気の揺らぎによるシーイングの補正に有効なんだと思います。またシーイングが良いのは正義で、月でも惑星でも段違いの解像度が得られます。

星雲/星団の処理

オリオン大星雲、アンドロメダ銀河などの処理の仕方です。複数のスチル写真をスタックして画像を得ます。
DeepSkyStacker を使っています。長時間?露光したスチルを数枚〜数百枚レベルでスタックします(総露出時間は数十分〜数時間になるぐらいで効果が出てくるようです。複数の日に撮ったデータを合成する方もいるようです)。JPEG も対応していますが、RAW の方がいいよとツールに言われます。多少時間によってずれたり回転したりしていても写っている星を頼りに移動/回転をかけながらガンガンスタックしてくれます。撮影条件(温度含む)が同じでレンズキャップをしたまま撮るノイズ除去用のダークフレームや、周辺減光を補正するためのフラットフレーム(撮り方色々ですがPCの液晶にグレーを表示させて撮ってます)は無くてもスタックしてくれます。スタック後にトーンカーブのようなものをいじって光害をカットしつつ星雲/星団を浮かび上がらせるよう補正をかけて炙り出します。一昨年もチャレンジしたのですが、元画像の解像度、ピントなどさまざまな要因はあるものの、イマイチ炙り出し方がわからなかったのが一番の原因だったんだなと思います。
長時間露光をすればスタックに使う枚数は減らせますが、そもそも都内で撮影すると30分なんて長丁場の露出画像を得ることは難しく、そもそも自分の場合赤道儀を持ってないのでそんな撮影もできません。短時間露光(数秒程度)で枚数を稼ぐやり方を知ったのですが、短時間露光なら飽和もしないし星も流れないし、赤道儀じゃ無くてもどうにかなるので(弊害はありますが)、都心で撮るなら一石二鳥?なのでお試し中です。

スタック処理後の追加処理

スタック後に複数の画像から一枚の画像を生成するモザイク合成と、複数の画像からデローテーションする方法について。適用できる種類は限られますが、更なる高解像度を得る手法です。


モザイク(パノラマ)合成

Image Composite Editor2 を使って先程の動画処理で得られた月の拡大画像などを繋げて一枚の画像にすることができます。月全体を一枚で撮るより更に高解像度のデータが得られます。星雲、星団系でも複数の画像を繋いで大きなものにするケースがあるようで、このツールが使われることもあります。

デローテーション

WinJUPOS という惑星の回転を考慮してスタックしてくれるツールを使います。土星などにも使えるようですが、木星を処理する際に有用です。木星の自転はとても速く、撮影中に刻一刻と回転していく様子がわかります。複数の時間差で撮った動画から得られたスタック結果を WinJUPOS にかけることにより、更に鮮明な画像を得ることができます。

処理画面例

Registax6

PIPP

Autostakkert!

DeepSkyStacker (補正前)

DeepSkyStacker (補正中)

Image Composite Editor2


ツール一覧

* Image Composite Editor2 は Microsoft が公式に配布をしなくなったので、別のところからダウンロードする必要があります。上記天文ガイドのリンクから辿って下さい。