2021/09/11

MAK127 focuser ver.3 (機械工作編)

去年(2020年)の夏、MAK127 に載せられるフォーカサーを作ってみました。

そして今年(2021年)の夏、満を持してCMOSカメラやADCを買ってみました!のはいいけれど、上記フォーカサーは干渉して使えず。。。が、ナイスな部品(プーリー)を発見したので、新たなフォーカサーを作ってみることにしました。 そして出来たのがこちらです!





前回はダイレクトドライブでしたが、今回はもともとのフォーカスノブをプーリーに置き換えて、ステッピングモータ(ステッパー)からタイミングベルトを通して回転させるようにしました。

ステッパーをドライブするのは去年と同じATOMICステッピングモータードライバキット(面倒なので、以降ATOMステッパー)にすることは決めてました。中身は ESP32 (WiFi/Bluetoothが使えるマイコン)と DRV8825(モータドライバ)。

ところで ASCOM に対応すると色々と便利だなということでググってみると、 myFP2ESP という ASCOM にも対応したフォカサーシステムを見つけました。名前の通りESP32に対応するだけでなくDRV8825にも対応(他にもいくつか選択肢あります)。

まさに打って付け。

移植も難しくないだろうとおもったらちょっと触っただけで動作させることが出来ました。
こちらについては別途書くつもりです。作者の方には本当に感謝です。

今回は機械加工的なことを書いておきます。


工作内容


モータをどうやって MAK127 に載せるかということになります。
AZ-GTi を使っているので AZ-GTi と一緒に使っても問題ないということが条件になります。

あとは簡単で、なるべく低価格。ですよね。

取り付け用の板を一枚作ってあとはねじ止めすればOKなお手軽方法を考えました。

部品表

Atomic ステッパーモータキット2156円
バイポーラステッピングモータ(1.8°/step)1380円
ステッピングモータ用ブラケット375円
60Tボア12mmタイミングプーリー1289円
20Tボア5mmタイミングプーリー799円
三ツ星ベルト タイミングベルト 60S2M244379円
SVBONYアリミゾ台座 (F9144C)3580円
ケーブルをまとめるスパイラルチューブ100円
フェルトシール100円
DCジャックケーブル210円
スイッチングACアダプター12V2A900円
MDF 4mm厚 (130mm x 60mm)300円台で大きいの買えた
皿ネジM6-15 x4100円ぐらい
ナベ小ネジM3-10 x4100円ぐらい

部品については後で詳細に書きたいと思います。

MDFとネジは合わせて 1000円以下でホームセンターで入手できると思います。
外税と内税がまざっているかもしれませんが、ざっくり12000円程度です。
部品は MDF の板に載せましたが、これをアルミ板にすると更にお高くなると思います。特に加工を外注すると。
またこの他に無くてもいいのですが、3Dプリンターで加工したスペーサーが入ります。

えーと、これ安いのか?いつのまにかこんなに出費してる😱
工作が楽しいのでそこら辺は忘れることにします(笑)

また使わせていただいたソフトウェア myFP2ESP が対応している操作用のアナログジョイスティックや、温度センサーも付けられるとは思いますが(ソフトの修正は必要)、上記には加えていません。

板の加工(MDF版)

3Dプリンターでもいけたので、最後の方に作例を簡単に載せておきます。



まずは図面です。左が MDF、右がアルミ。書き方これでいいのかな?入手した部品次第なので寸法はあくまでも参考です。ちゃんとチェックしてから加工始めてください。


MDFでの加工例(ざぐり難しい)


4mm 厚の MDF (合板みたいなもの)を使用しました。適度な強度があってとても加工しやすいし安いので、プロトタイプ制作にはもってこいです。強度があるアルミなら右側の図面にしてもいいかもしれません。MDF だと左側の方が無難だと思います。

ちなみに板に載っている部分の重さは500g前半といったところ。MDFをアルミに変えると500g後半になると思います。アルミの場合は面取りした方がいいと思います。

ここで一番重要なのは、4mm の板厚。4mm の厚みには意味があって、アリミゾ(他のアリミゾだと違うかも)に載せて AZ-GTi と干渉しないギリギリの厚みだということ、アリミゾとはM6の皿ネジで接続するのだけど、皿の厚みが3mmちょっとあるので、少なくともそれ以上の厚みがあることで 4mm が丁度でした。板からネジが飛び出ると AZ-GTi と干渉するので、ざぐりが必要です。またネジの長さも重要で、長すぎると中でアリガタと干渉します。

本当にスレスレ

上の方にある縦長の4つの穴はモータブラケット用です。秋月で入手したモータブラケットはインチサイズで設計されてるっぽいのですが、ミリサイズに適当に載せてます。M4のネジを想定してたのですが、そんなこともあってM3で取り付けてます。またプーリーを繋ぐタイミングベルトを張るために縦長の穴にしてるのですが、あんまり調整ききません。もう少し上の方に伸ばした方がいいかも。

中程の四角の穴は ATOMステッパーの LED 覗きとボタンを押す穴の兼用です。無くてもいいです。

スペーサー

横穴は後で開けてます

モータブラケットとアリミゾの間にはそれなりの隙間が開いてしまいます。取り付け板をアルミにした場合は気にならないかもしれませんが、MDFの場合はベルトを引っ張るテンションで歪むし、そのためにモータが鏡筒を傷つけるかもしれないのでそれを抑えるスペーサーを3Dプリンターで作りました。ついでにこの隙間を有効活用して、ATOMステッパーを格納する穴を用意しました。もちろん3Dプリンターで作る必要はないので、MDFで作成する場合はモータブラケットとアリミゾの間になにか入れて、縮まないようにすればいいと思います。
TINKERCADでデータ公開します。ボタン用の穴はないので、後で加工するか元データを修正してみてください。

ところで ATOMステッパーを入れる穴は若干ゆるめに作ってます。100均で薄手のフェルトシールを買ってきて下(アリミゾと接する面)の部分にだけ貼ってます。適度に滑り止めになっていい感じです。


組み立て

組み立ては簡単です(モータの配線は電子工作編で)。ネジを12箇所締めるだけ。ベルトの調整でモータブラケットは位置調整の後ネジを締めます。



見ての通りです。簡単ですね。スペーサーは両面テープで付けています。あとモータ取り付けのM3のネジが短いです。長すぎるとモータに当っちゃうので微妙なところ。

プーリーの取り付け

モータ側は特に問題ないと思いますが、MAK127側はちょっと注意が必要です。



フォーカスノブは六角レンチでイモネジ二箇所を緩めて引っ張ると簡単にとれます。機械油が付いているので汚れに注意です。注意しなければいけないのはプーリーを取り付ける時に、フォーカスノブの付いていた軸を手前に十分引っ張り出し、プーリーをピッタリ(軽く回せる程度に)つけるようにします。ここでガタがあるとプーリーを押したり引いたりしただけでフォーカスが狂います。
あとプーリーをピッタリ付けるとMAK127に干渉してしまうので、なんらかのスペーサーを入れたほうがいいです。入れないと塗装が削れていくと思います。下敷きを丸くきって挟んでもいいですが、3Dプリンターあるので、スペーサー作ってみました。3Dプリンターが無くても穴が12mmのアクリルなどのパイプが入手できればそれをカットして入れてもいいと思います。
3Dプリンターのノブスペーサーのデータ

MAK127に取り付け

タイミングベルトを引っ掛けて、アリミゾの固定ネジを締めればOKなのですが、ここでベルトの張りを調整します。張りすぎるとモータの負担が大きくなりますし、ゆるいと滑ってしまいます。ブラケット取り付けネジを緩めて調整します。
ベルトの長さですが、適当に測って3種類オーダーしましたが、もうワンサイズ短いのにすればよかったです。丁度いいベルトの長さの測り方わかりません。。ちなみに今回選んだベルトは一本300円ちょっとで、長さも色々あります。他のサイズはモノタロウで検索してみてください。ベルトは水平になるよう板の取り付け位置とモータ側のプーリーの位置を調整してみてください。

ちなみにベルトを張った段階で、モータブラケットと3Dプリンターで作ったスペーサーの間に隙間ができてしまいました。ベルトを張るとMDFがしなるので、ここにさらにスペーサー入れてしならないよう調整してます。アルミだったらそんなことしなくてもいいかもしれません。


部品について

入手性や価格についてもあると思うので、全く同じ部品を手に入れられない場合もあると思います。

プーリー

フォーカスノブに取り付けるプーリーは穴の直径が12mmは必須です。
外径も大きすぎるとMAK127の接眼レンズを取り付ける筒と干渉してしまうので、外周の直径42mm(まだ多少余裕はあるけど)以下が妥当です。モータ側のプーリーは入手するステッピングモータの軸の径に合わせます。フォーカスノブよりは小さくしておくと細かいピント調整が可能になります。ただし細かくしすぎるのも問題ありかと思います。

タイミングベルト

これは丁度いいの探すしかないです。モノタロウで漁ってください。いろいろあります。

ステッピングモータ(ステッパー)

ステッピングモータはバイポーラ型と呼ばれるものを選んでください。あとはステップ数と対応する電圧(12Vでいいです)で選びます。ステップ数とプーリーはピント調整の細かさを決定します。

MAK127は私が測った感じだと、ピント調整で 21mm 軸(そのまま主鏡かな?)が前後します。21mm 移動するのに 28回、回す必要があるので、

21mm/28回転 = 0.75mm 

1回転で 0.75mm 移動できることになります。

ちなみにピント調整の細かさはどれぐらいあれば良いというのは、myFP2ESP のドキュメント Focuser Basics.pdf に書かれています。ここから探してみてください。

では実際にステッピングモータが1ステップ移動した時にどれだけ軸が前後に移動するかというのは、モータの仕様と選択したプーリーから計算できます。

ステッピングモータはモータが一周するステップする数が決まっていて、仕様には例えば 200step とか、0.9°/step のように書かれています。0.9°だと、一周するステップ数は360/0.9=400stepになります。

ここで、
ステップ数: S
フォーカスノブ側プーリーの歯の数: Tf
モータ側のプーリーの歯の数: Tm
と定義すると、
Tf / Tm x S が、フォーカスノブを一周するために必要なステップ数になります。
従って 0.75mm / (Tf / Tm x S) が 1ステップで移動できる量になります。

私が選んだ部品の場合は
0.75 / (60 / 20 x 200) = 1.25um/step となります。

Focuser Basics.pdf を読むとわかると思いますが、十分細かい移動量だと思います。400step のモータもよく売ってますがそこまでしなくてもという感じです。
ちなみにモータのプーリーを 16歯にすると 1um/step になりますね。

電源

手持ちの12V/2A の情報書きましたが、12V/1A とかでも十分です。AZ-GTi と電源共用できればいいんですが。上手い方法あとで考えたいと思います。忘れなければ。

アリミゾ

アリミゾは AZ-GTi に取り付ける時スペースが結構シビアなので、板の厚み含めて干渉しないよう注意してください。

他に注意した方がいい部品は特になかったと思います。


以上、機械工作編。続きは電子工作編で。

追記


モータを搭載するMDFのプレートの代わりを3Dプリンターで作ってみました。
これはこれでありです。細くしたので干渉も全然気になりません。3Dプリンターは PLA で出力してるので、やはりしなります。ただ、上記で作ったコントローラのケースがあるのでそれを吸収してます。モータの位置を調整したあとに空くスペースに硬いなにか薄いものをしっかりと挟めば大丈夫だと思います。

3D プリンターのデータはこちら


3Dプリンターが使える環境があると加工することが無くて更に簡単ですね。





4 件のコメント:

KEN さんのコメント...

はじめまして!
myFP2ESPを検索して辿り着きました。
以前は、Stellarmate(Kstars&Ekos)を使っていたので、Moolite互換のフォーカーサーを自作していましたが、最近ASiair Plusに乗り換えたので、Moolite互換のフォーカーサーは使えなくなってしまいました。それでスタンドアローンで動くフォーカーサーを探していました。

似たような工作をしているので、思わずコメントしてしまいました。MAK127はフォーカス範囲が広いので、フォーカーサーが合ったほうが便利ですよね。

また寄らせてもらいます。

たつるー さんのコメント...

コメントありがとうございます! フォーカサーを作るきっかけは、MAK127でピントノブを回してを合わせようとすると像がグラグラするのでピントを追い込む時に振動を抑えたかったのと、市販のフォーカサーが付かなそうだったからです。

ちなみに myFP2ESP は Serial 接続に対応しなくなってしまったので今は使ってません。WiFi 接続はうちの環境だと微妙で。myFP2ESP を使っていたときは ASCOM フォーカサーに対応したソフトからコントロールもやってみましたが、これもなくてもいいやと。現在では ATOM Stepper に I2C でエンコーダーを繋いで、エンコーダーからダイレクトに制御するようにしてしまいました。クリック感のあるエンコーダーなのでクリック数でこんなもんかなと直感的にピントが追い込めるので重宝しています。

KEN さんのコメント...

同意します!
アプリを通さず、ダイレクトで制御できるのが一番簡単ですよね!最初にセットするときに必要なだけなので。ただ私は北海道に住んでいるので、撮影始めと終わりでは10度近く違うこともあるので、温度補正の勉強をしています。

ロード乗られるんですね!?

たつるー さんのコメント...

あ、コメント全く気づいてませんでした。はい。ロード乗ります。ヘタレですけど。